『川中島』の白桃
いま出回っている桃は、最後のシーズンで今月半ばには店頭から消える。スーパーで『川中島白桃』をつけ、「風林火山」の武田・上杉の最後決戦場である長野市の川中島が、全国有数の高級桃産地と初めて知った。
毎朝、食卓に並ぶ林檎は、ようやく端境期から抜けだしたが、値段が高くその割に美味しくない。8月にはいってから桃が林檎の代用をするようになり、桃が朝の食卓には欠かせなくなった。
桃といえば、東関東では山梨の「白鳳」が有名だが、ことしは「川中島白鳳」が目立った。川中島の古戦場は、郷里に近く、現在は千曲市になっている更埴地方は、昔から信州林檎の産地として知られていた。
迂闊にも、川中島が名だたる「高級桃」の産地とは知らなかった。スーパーの店頭に並ぶ「川中島」には、山形産、福島産として売っている桃もあり、『川中島』は桃の高級ブランドとなっているのに驚いた。そして、全国の桃生産の3割が川中島産と聞かされても、イメージが湧かなかった。
故郷を離れて半世紀近くなると、その物産にも疎くなる。信州林檎は藤村の詩にも読まれ、青森に次ぐ産地として知られ、故郷から毎年、送ってくるが、桃は送られたことかなく、「信州と桃」というイメージはなかつた。
それでも、桃にはやや煩く、あの柔らかいのはダメ。硬くて歯こだえの食感があるものを選ぶ。硬めなのは、信州産の桃の特色で、子どもの頃からその食感に親しんできた。どちらかというと、柔らかめな山梨産よりも東北地方の福島や山形産の硬さのある桃を探してきた。
故郷の名前さのままの「川中島産」は、やはり好みどうりの硬めだった。
今年の桃は、4月の冷え込みで成育が遅れたが、夏の記録的な猛暑で例年なみに戻ったという。旧盆の8月中旬までは「白鳳」がほとんど。それが過ぎた現在は「白桃」が出回っている。
「川中島白桃」は、千曲川流域のなかでも水はけがよい。それに武田。上杉合戦の詩で謳われたように霧がまく。夜と昼との気温の差が大きいため甘味が強く、中味が締まった桃ができる。
その触感が歓迎されて、全国に名のとおる高級ブランドにのしあがった。
桃のシーズンも少ないので、やや大ぶりの「川中島白桃」を買ってきた。
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