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2011年1月29日 (土)

スランプになったら大掃除

 作家は執筆していて行き詰まってスランプに陥ると、それから抜け出す工夫や”儀式”をする。原稿用紙やパソコンに向かって、思考を凝らしてもなかなか知恵がふかばない。書くのやめて、散歩にでかけるか、庭に出て樹々をながめて気分転換をするが、いまは亡き作家の吉村昭さんは、書きあぐねると書斎を出て家中の大掃除をするのがスランプ克服に役立つと書いていた。

 吉村さんに倣って、掃除をすることでスランプを克服するのを何年か続けている。とくに寒い冬、よく晴れあがった日には効果がある。日向ぼっこをして、次の書きだしはと思案しているよりも、ハタキと掃除機を持ち出して掃除大作戦をはじめる。
 よい洗剤なども開発そされているので、気がのると家中のガラス拭きからトイレの掃除、洗面所の水道蛇口もピカピカに磨く。普段は無精で家事にはいっさい手を出さないので、家の者は呆れている。
 書斎と8畳の寝室や居室に電気掃除機をかけ、障子にはハタキをかけて廊下は水拭きをする。掃除の前には、机に積み上げたままの本や乱雑になっている資料を整理。脱ぎ捨てままの衣類をハンガーに掛けたり、畳んで引きだしや収納ケースに収める。
 これが習慣になったのは定年後からである。二階は書斎をはじめ居室は私が占有、一階はすべて妻のものとして、食事やお茶のとき以外は階下に降りない。いわば二階は”私の城”で朝食がすむと、二階に”出勤”する。リビングに居座って新聞を広げたり、テレビを見ていると、妻は時間がとれず落ち着かない。友人が訪ねてきても、二階の私に気兼ねなくお喋りできるから、定年前の生活ペースが続けられる。

 最初は、二階でものを動かしてガタガタ音がすると、何事が起きたかと妻は驚いて二階に駆け上がってきた。横のものを縦にもしない男が掃除などする筈がないから、驚いてしまう。「手伝います」というが、手をだすなと断る。
 女性は掃除は能率的に短時間で済ませて、洗濯など他の家事をしないといけないと考えるが、私は
スランプ解除のため楽しみながら、のんびりやりたい。馴れない手つきに妻が手を出そうとすると、「自分なりの手順とセオリーがあるから手を出さなで」と拒否されて、怪訝な顔をして階下へ降りた。
 それが習慣づいて、最近は二階で音がしても「掃除を始めたな」と気にしなくなった。きょうは本棚を主に掃除しよう、衣類の入れ替えを中心に、机の上の資料整理をと、その日によって手順が違い、読みかけの本や久しくみないビデオやDVDをみつけると、道草して拾い読みしているから時間がかかる。女性の目からみたら、非能率的である。

 男性は女性と違って、変なところに凝ったり潔癖なところがある。吉村昭さんの奥さんで作家の津村節子さんは、「掃除をしてくれるのは有難いが、ドアのノブばかりピカピカに磨くので困る。万編なくやってくれればよいのだが、ノブだけが光っていると他の汚れが目立ってしまう」と吉村さんの掃除癖について書いていた。たしかに、そうした傾向は否めない。
 掃除をする目的が男性と女性と違うから仕方がない。それに、定期的に掃除をするのでなく、原稿を書くのに行き詰まったりしたときにするだけで、書くことにのっているときは掃除などせず、少々の埃がつもっても気にかけない。だから、妻から時には苦情がでる。

 掃除し終わったときの爽快感は格別である。塵がない青畳に大の字になって、青い空をみあげたり、流れる雲をながめていると爽やかな気持ちになる。日向のデッキチェアーに横になって二階から庭を眺めるているとスランプも消し飛んでしまう。女性の場合は、掃除は毎日の日課でたまった家事をこなすため、そんな感慨に浸っている時間などない。「いいご身分ずね」とたまには皮肉の一つもいってみたくなる気持ちも分かる。

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