女性にもてる民主党
鳩山民主内閣の支持率は、最近の世論調査で各紙とも軒並みに急落し「朝日」は50%ラインを割った。政権の前途に黄信号をあげる気の早い予測記事を掲げる報道ぶりの中で、「朝日」は翌日の紙面で「民主政党支持率は堅調」と分析、いままで自民党を支えてきた「高齢女性の心変わり」が原因と指摘した。
さらに「朝日」は「いったん捨てた恋人には戻らぬ」とまで明言、高齢女性だけでなく、20代以上の全女性の民主支持率は40%を越え、自民支持の10~25%を大きく引き離したデーターを克明に1面に載せた。解説面では「自民に愛想が尽きた」という自称”自民党の恋人”だったという作家・橋田須賀子さんにコラムで語らせて「女性にもてる民主党」を取り上げた。
自民党政権時代に育った政治記者の政治センスと、こんどの政権交代を評価しようとする記者層との感覚のズレを物語っている紙面づくりに、”揺れるマスコミ”の一面をみた。
政権をとって100日、それも政策格差のある3党の連立政権で、国民に見放された自民政権の後始末を負わされる。それに加えて世界的な経済不況の中で、初めて政権について民主党のお手並み拝見というのは気が早い。世論調査の支持率低下を下り坂と断じて、あたかも危険信号といわんばかりの各紙の報道ぶり。数字が出たからといってそれを大々的に問題として取り上げる新聞・マスコミ報道は、将来展望の視野に欠けている。
米国のオバマ大統領の支持率が40%に下落しても、それほど大騒ぎはしない。世論の支持率は尊重しなくてはいけないが、だからといって「先行き不安」「不透明感」などと安直に書きたてるマスコミには、「日本の総理(そうり)は草履(ぞうり)より長持ちしない」と米国人に揶揄された悪弊の残糟が残っているのかと、考えたくなってしまう。
国民のほうがはるかに賢く、そんな観測記事には目もくれない。再生不能に陥ったままの自民党の姿をみれば、現実離れした”危険信号”報道などは見向きもしない。世論調査の結果を紙面に載せるのはよいが、一面トップに大々的に扱うセンスが問題である。民主政権への警告という観点というのなら、然るべき内容と解説があってバランスがとれる。
「民主 政党支持率は堅調」は、前日のトップ「民主政権の支持急落」を補完するかのように、見出しもわずか2段の扱い。ただ、内容は中身の濃い分析で、読者に目立つように載せてほしかった。4面の関連解説記事も読みごたえがある内容だった。
「朝日」(22日付け)の1面の片隅に載った「男女別、年度別の政党支持率の変化」図表をみて驚いた。麻生政権のときは全世代で女性は自民党支持だったが、鳩山政権誕生の兆しがみえはじめた09年6月になると、50歳代までの女性は自民から民主支持に変わった。60歳が辛うじて27%と自民、民主とも同数の支持率、70歳になると自民が39%に対し民主は20%と自民が圧倒的に強かった。ところが鳩山政権になった9~12月になると、全世代で女性支持率は40%を越え60歳代は自民18%に対して民主支持は46%と最高、自民の味方だった70歳も一挙に42%をマークして自民支持の25%に大きく水をあけた。
60~70歳代の女性は、戦中、戦後の苦難を生き抜き「平和」や「豊かさ」を自民党と共に享受した世代で、政権運営の経験がない民主党には警戒感が根強かった世代である。政治意識も高くなく、夫唱婦随で自民党を支持してきた女性たちである。
それが、自民党に絶望してごく自然に民主政権支持に激変した。一時的なブームやムードに乗せられる世代ではなく、生活感覚に厳しく、孫子の将来を男性より深く心にかける世代である。毎日、スーパーの安売りチラシに目を凝らし、ポイント稼ぎをして生活費を考える。パートなどの働き口もない世代だから老後生活も心配になる。将来展望もなく、官僚まかせで、税金の無駄遣いを見せられると怒って、きのうの味方を敵として民主党に走る。ミーハー的な気まぐれではなく、彼女たちが如何に真剣であるかを知ると、民主党も油断しておれない。
「総選挙前は”やれるものならやってごらん”と思っていたら、テレビに出てくる閣僚は格好よく、新しいことをやってくれそうだ。まじめそうで筋を通すのかしら」と自民同窓生の橋田さんも心変わりを語っている。数十万はする舶来スーツを着てふんぞりかえり、官僚の書いた答弁を機械のように読むだけの閣僚、政治家イメージが定着しているのに対して、明らかに既製とわかる安いスーツで予算削減の仕分け作業に激論をかわして徹夜する民主党の副大臣、政務官。それをみると「案外、やるもんだ!!」と感じるのは女性だけではない。見学にきた河野太郎氏が「羨ましい」と漏らしたのも理解できる。
たしかに、鳩山首相には決断をしぶる優柔不断さは目立つが、「こども手当」も最後は所得制限を設けず「社会がみんなで子どもを育てる」と決断した。これで、子供を抱えて教育費に悩む主婦層にまた人気が出るだろう。「捨てた恋人には戻らない」といわれるように「女性にもてる民主党」は安定し、一方の自民党はソデにされてしまう。永田町しか知らない政治記者には、ウーマンパワーの実態と、その怖さが理解できないのかもしれない。
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