高橋真梨子に魅せられて
NHK番組の「SONGS」で、偶然、「高橋真梨子の特集」をみて、また数年ぶりに真梨子の魅力によみがえった。新譜を求めたり、アルバムのCDを連日、聴きなおして、すかり嵌まってしまった。
真梨子の魅力は、その声、透き通った浸透力、それに潤いがあるといわれのには同感。歌い方は、プレーンで過度の感情移入はないが、適当に色っぽく、哀愁よりも前向きで、聴いていると元気が湧いてくる"大人のバラード"がなによりも魅力である。
「一見無個性に見えて、実に個性的。透明な感じがするのに実に色っぽい。違った要素がモナカみたいに何層にも重なっている」と、彼女の歌を数多く手がけた作詞家・阿久悠が語っているのを読んだが、彼女の魅力を知り尽くしている彼ならではの評と思った。
デビュしてから33周年を迎え、1949年(昭和24年)生まれと還暦も近いとは思えぬ歌唱力の素晴らしさ。阿久悠の遺作として発表した最新曲『目を見て語れ 恋人たちよ』は、それを如実に示していた。
目を見て語れ 恋人たちよ 瞳の色の真実を 時に怯える
瞼の動きを 心いためて探り合えよ それが愛になる
阿久悠が亡くなる前まで、真梨子のためにとっておいた歌詞といわれ、彼女ならでは歌いこなせない情感と内容のある曲とみた。
その曲と並んで新譜に組み入れた『not so bad』は、彼女が自分の生きてきた道を振り返って自ら作詞した"人生のバラード"として共感した。ある程度の人生を経験した者が、この曲を耳にしたら、「自分の人生もまんざらではなかった。not so bad my life」と歌いたくなるだろう。彼女が刻んできた歌の年輪が勇気づけてくれる。
ごく普通に 食べて飲んで 歩いてきたとか それが幸せと
とっても幸せだったんだと分かった だからnot so bad my life
この歳月の流れを受け止めて
高橋真梨子との出会いは、10年前でファン暦としては短い。たまたま、テレビ朝日系の『はみだし刑事・純情派』シリーズ(1996~2004年・8シリーズ連続ドラマ)のファンだった。そのpart3として、1998年10月から1年間、毎週続いたドラマに真梨子の『フレンズ』が主題歌になったことから、彼女の曲に興味をもった。
前衛書道家として知られる榊莫山が、熱烈な真理子ファンで、アトリエに入ると、まず真梨子のCDを聴いてから制作にかかる、いう話に興味をそそられた。CDのアルバムを求めて、最初に耳にしたのが『桃色・吐息』だった。
莫山先生が「聞いていると、さあ、やるぞという元気が出るんだ」という言葉どうりだった。すでに、リタイアーの身にラブソングでもないと気恥ずかしく、車のカセットにCDをこそっりセット、ドライブしながらボリュームをあげて「咲かせて 咲かせて 桃色吐息 あなたに抱かれて こぼれる華になる」と口ずさんだり、声を張り上げた。
演歌には興味はなく、五木ひろしをたまに聴く程度だったが、桃色吐息の「海の色に染まる ギリシアのワイン 抱かれるたび 素肌 夕焼けになる」というフレーズが好きだった。
『ランナー』の「夜明けの街を一人走る あなたの夢は破れ 汚れたシューズ 投げ捨てて 部屋をとびだした」の出だしに、遠い青春を重ねたり、『枯れた花』の「光り輝いた道を 貴方と歩きたい
から 燃える時も 尽きる時も そばに居たい」に夢想する。
『歯がゆい唇』は、ファンが選んだベスト4位とは意外だった。「歯がゆいのよ その唇 キスする場所 間違えてる 心の傷なら そなとこにない」は曲の山場にあるフーズ、初な純真さと、それとは違う連想もされそう歌詞にくすぐられるれる。そして、心地よい明るいリズムが「その口ずけ 私の中の落とし穴 ぽつかり開いている 孤独を塞いで」と、美しく締め括る。阿木耀子の歌詞、羽田一郎のピアノ、真理子の声がハーモニーしてテンポよく盛り上がってゆく。
『ごめんね』 ファン投票の2位にランクされた96年のヒット曲。「消えない過ちの 言い訳する前に 貴方に もっと 尽くせた筈ね
連れて行って 別離(わかれ)のない国へ」 真梨子の結婚前後の想いが自分の手で作詞されている。
『for you』 ベスト1 に選ばれ、カラオケや結婚式の披露宴でよく耳にするお馴染みの曲。後半で最高の盛り上がりをみせる求愛シーンをイメージさせる、プロポーズには最適な曲にしびれる。
「もしも 逢えずにいたら 歩いてゆけなかったわ 激しくこの愛
を掴めるなら 離さない 失くさない きっと あなたが欲しい
あなたが欲しい もっと奪って 心を」
私が好きな曲は、『グランパ』 「いいね いい顔しているね 白髪のあご髭 さすりながらささやく もっとやさしくなれよと 叱られて 心が oh ロンリネス 私が娘に よく似ていと話した 遠い星空を見上げ 二人して 心が oh ロンリネス」
彼とさりげない口喧嘩をして飛び出し、旅先の寒いウェストコーストの田舎道で出会ったグランパ(おじいちゃん)との交流が、ほのぼのと伝わってくる。真梨子ならではの雰囲気が出ている。
『五へ番街のマリー』もいい。1973年の古い曲で、15年前、ニューヨークのカーネギーホールで演奏され大ヒットした。阿久悠の作詞で、真梨子フゥンなら知らない者はない名曲。ニューヨークの古い街五番街の雰囲気が伝わってくる。
「五番街へ行ったならば マリーの家へ行き どんなくらしをしているのか 見てきてほしい 五番街は 古い街で 昔から人が
きっと住んでいると思う たずねてほしい マリーという娘と
遠い昔にくらし 悲しい思いをさせた それだけが 気がかり」
こんどのNHKのSONGでも、真梨子がこの歌を歌い、15年前のカーネギーホールの演奏フィルムが映され、五番街の様子も放映されたが、歌で連想したとおりの雰囲気の街だった。懐かしさと同時に彼女の歌の素晴らしさを改めて知らされた。
『ジョニーへの伝言』 「ジョニーが来たなら伝えてよ 2時間待ってたと 割りと元気よく出ていったよと お酒のついでに話してよ」
こんな出だしで始まる曲は、だれもが好きになるだろう。
作詞した阿久悠は「始めから高橋真梨子のために書いたと嘘を言いたくなるほど、ぴったり彼女にはまっている。彼女以外の人が歌うことは到底考えられない。それくらい彼女の曲になってしまっている」と語ったという。それを知って、真梨子の魅力が少し分かりかけてた。
余談になるが、NHKの番組で、星野仙一さんのコメントが入り「野球の勝負でイライラしたときに彼女の歌を聴くと苛々が吹き飛んでしまうんです」と語ったていた。また、俳優の西田敏行さんは、真冬のロケ先でカンヅメ状態で疲れきったときには彼女の歌を欠かさずに聴き込んでいたといわている。
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