伊豆に早春匂う水仙の里
毎年の恒例になっている伊豆半島半周の新春ドライブを楽しんだ。関東では雪が積もり厳寒の成人連休に出かけたが、伊豆は例年になく穏やかに晴れ上がり、日本の三大水仙群生地とされる半島途端の爪木崎(下田市)は水仙が咲き乱れて早春を匂わせていた。
太平洋に突き出した岬で、岩礁を砕く荒波を立てる強風にさらされる爪木崎で、こんな穏やかな海と咲き誇る水仙群をみるのは10数年ぶりだった。300万本の水仙見物には最高の年かもしれない。
熱海を基点に、天候にかかわりなく伊豆半島を半周ドライブするのが新春の恒例になったから、20数年になた。伊豆の海の雄大な景観を見ないと新しい年があけない。波が打ち寄せる海岸線沿いの国道134号線は、道幅は片側一車線、岩をくり貫いたトンネルと急カーブの連続、それにアッパンダウンがきつく、ハンドル捌き、アクセル加減にも神経を使うが、ドライブの醍醐味でもある。
半島の突端、下田まで80㌔を2時間かけて、伊東、伊豆高原、熱川、稲取、などの観光地を通過、大海原に浮かぶ大島など伊豆7島の島影を眺めながらのドライブ。その魅力にとり憑かれると、やめられない。悪天や曇天の日も、行けるところまでゆく。
ことしは、出発の前日、関東地方は初の積雪、天候も荒れ模様で予約した宿のキャンセルも考えたが、当日は雨になった。出発を遅めにして強行したが、道路はガラガラ、海岸沿いの西湘バイパスには車の影もなく、心細い。熱海に入った頃は小雨になったが、気温は7度と低く、温泉につかりながら明日の天候の回復を祈った。
翌日は連休初日、雲ひとつない好天に下田を目指した。悪天候が尾をひいてか、道路は車の姿がなく、スピードを落として紺碧の大海原を横目にみながらゆっくり走れた。熱川温泉を過ぎ、稲取温泉にさしかかると、高い椰子の並木道がつづき、アロエの赤い花が咲き誇って景観が一変、陽射しもつ強くなり、車内は暑くなってきた。暖房を落としてセーターだけになったが汗ばむ。
後続する車はないので、スピードを落として海景色を楽しむ。鏡のような波ひとつない海原が,陽の光にキラキラ輝いて眩しい。岩礁の岩が黒いシルエットを描いて浮かんでいる。水平線の彼方には大島など伊豆七島が霞んで横たわっていた。もっも近い大島の白い街並みや埠頭がみえる。こんなに近く大島が見えるのは初めてだった。
下田に入り、爪木崎の交差点で右折、野水仙の群生地である岬の途端に向かう。天候が悪く、ここ3年ほどは途中から引き返したせいか、群生地まで長く感じられた。その先の須崎には天皇陛下の御用邸があり、かつては近くまで足を伸ばした。
水仙の群落地は、300万本の水仙が丘の斜面を埋め尽くすように白い花が咲きほこって、あたりい一帯に甘い香りが漂っている。以前は、荒磯の強風に倒伏され、その下から花が首をもたげていた。「荒磯に萎えてなお咲く野水仙」と、その健気さを詠ったが、水仙の合間に植えられたア
ロエが抜きん出るように赤い花を咲かせていた。また海岸への道も整備され、紺碧の空と蒼い海、荒々しい岩礁も水仙の甘い香りに包まれて優しく感じられていた。
海風をまともに受ける太平洋に突き出した岬は、強風が吹きあれるのが当り前で、ダウンコートに着膨れてマフラーで完全武装しないと水仙見物はできなかった。まして、風の強い海岸に立って海景色を眺める余裕などなかった。
この日は無風のボカボカ陽気で、水仙見物の遊歩道を歩く人たちもコートを脱いで手に持っていた。また、海岸の砂浜で海や岩礁を見物するグループも目立った。
水仙の群落にところどころ植えられたアロエは南アフリカ原産の蘭の一種。爪木崎にくると途中、国道の両側に赤い花を咲かせたアロエが連なっていた。近くの白浜にはアロエ研究所もある。日本にはキダチアロエが多く、「医者知らず」といわれるほど鎮痛、胃腸薬に使われている。ただ花を咲かせるのは難しく、南伊豆や房総でないとみられない。野水仙の花の引き立て役になり、南伊豆の冬を彩る風物詩になっている。
野水仙の群落から、岬の突端にある爪木崎灯台に向かう遊歩コースもある。風のない穏やかな日は灯台へ向かう人も多い。数年前、風のない日に灯台見物にでかけ、帰りに奇岩怪石の岩礁の波うち際に、墓がひとつだけ荒波に洗われているのをみた。漁に出て帰らぬ人の墓だろうと見詰めていたら、下から甘い水仙の香りが漂ってきたのが忘れられない。「荒磯や水仙匂う墓一基」
水仙の群落をたっぷり楽しんだあと、向かいの植物公園で早春を告げる草花の花を堪能した。そのいくつかを写真で紹介しよう。


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