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6月 06, 2009

「女」の「オバさん」化

 日本女性の平均寿命は86歳にのびた。男性は79歳というから、女性はますます長生きして元気になり、女ならではの国も女性天国ならぬ"オバさん天国"になりそうだ。街や展覧会などには、中高年女性が溢れてそのパワーに圧倒されるがちである。
 いま評判の脳科学者・茂木健一郎氏が近著「化粧する脳」(集英社新書)の中で、「女」の「オバさん」化について書いていた。面白い観察とおもったので、その一部を紹介しよう。

 「世の女性はその実質において「女」と「オバさん」に分かれているように思う.。若さとか、見せかけの問題ではない。
 隠すのが上手い女性が「女」である。ところが、女性は「オバさん」化してしまうと、「隠す/見せる」のコントラストを欠いてしまう。それは顔や化粧の問題ではない。「言動」の問題である。時も場所も選ばず、何事も包み隠すことをしなくなってしまうのだ。僕はこれを「無意識の垂れ流し」と名付けている。
 おそらく、「女」も「オバさん」も思っていること、感じていることの「総量」は、そう違わない筈だ。しかし、「オバさん」は思ったことを片っ端から口にしてしまう。その一方で、「女」は口数が少ない。心に思ったことのうち何を表出するかを考え、言葉を選ぶからだ。たとえば、大勢の人の集まる場所で、冷房の効きが悪いとか蒸し暑かったとする。そんな場面で「オバさん」は、会場に入ったとたん、声をあげてしまう。
 「あー、暑いわね、暑い、暑いわよねえ、暑い、暑い。クーラーが壊れているのかしら。喉渇くわよね。ほんと暑い。窓、開けたほうがいいかしらね・・」と。
 このように、思ったことを逐一言われ続けると、同席者にとってはノイズになってしまう。周りは聴こえぬふりでもしてやり過ごすしかなくなる。「いちばん暑苦しいのは誰だ?」と心の中で呟きながら。Photo_2
 「女」は思ったことのすべてを口にしようとはしない。だから、「この部屋、暑いですね」と一言いったとたん、周りの男性たちはそわそわしはじめる。「何か冷たい飲物を持ってこようか?」「窓を開けようか?」。(中略)
 男はこういう状況になると、いてもたってもいられなくなる。彼女が発した「暑いですね」の一言の真意を探ろうと、必死になってしまう。要は発した言葉に駆り立てられるのではない。隠された言葉に駆り立てられるのだ」

 週に3回ほど、運動不足解消と股関節痛のリハビリをかねて、フィットネスクラブに通っている。ジムでマシンを使う筋トレのほかプールで水中歩行をしているが、オバさんラッシュに辟易させられている。若い女性よりも、時間がたっぶりある中高年女性が多く、なかにはクラブに通うのを日課にして、一日を過ごす女性もいる。
 朝一番に来て、午前中はジムで過ごし、エアロビグス、ヨガなどの教室をハシゴした後、午後はプールで水中ウォークやアクア、そして最後は入浴してさっぱりして帰る、といったパターンが多い。昼ごろになると、ロビーで彼女たちはお握りや弁当を広げて"会食"をはじめる。男性は座る場所もなく隅で小さくなっている。人の集まるロビーで平気でお握りをほうばる無神経さに呆れ、決められた場所以外では人前ではものを口にしないエチケットなどまったくないのに驚く。
 それに、迷惑なのは、プールの水中歩行コースで、立ち止まってお喋りしている。一定の速度で歩く人にとっては、リズムを狂わされて運動にならない。水中歩行は話しながら歩くくらいの速度でといわれているが、立ち止まったままのお喋りは傍若無人である。
 ほとんどが「オバさん」で、「女」を卒業した人たちだが、たまにコーチが注意しても平気でお喋りしている。運動をしにきているのか、お喋りをしにきていのか分からない。
 ある友人が講演を聞きにいったら、後ろの席にいたオバさんグループが、講師の話にいちいち頷く声が耳について集中できなかった、と話していた。彼女たちは真剣になって耳を傾けて相槌をうっているのだろうが、まわりの人にはノイズになってしまう。

 茂木センセイも、オバさんパワーに迷惑と感じたことがあるのだろう。化粧は周りの人を意識して他の人の視線を受け入れるかたちで自分を磨く。そのことの深い意味が、近年の脳科学の研究の中から浮かび上がってきた。化粧は人間の社会性の象徴である、と述べている。そうした難しい話はともかく、化粧は、隠すところはファンデーションなどで隠し、顔の表情に反映しやすい唇や目元などはアピールする。この「見せる/隠す」のコントラストが顔の美しさを生んでいると、解説しているのは、だれも理解できるだろう。
 いずれしろ、他の人の視線を意識することから、隠す、見せるという言動が生まれてくる。女性がある年齢に達すると、化粧はするものの「隠す」という意識が次第に薄れて、周りの人の視線を意識する度合が減ってくる。だから、万事が大っぴらになって、傍迷惑も考えずに行動する。こうなると、もう「女」ではなくなって「オバさん」化すいうのが茂木説である。
 「自分の言動を選択し洗練させることで、「女」は男性を惹きつける。これは、化粧と同じである。自分の言動も隠すところは隠し、見せるところは見せる。このコントラストをつくれるだけでずっと美しくなれる」と、茂木氏は結んでいる。
 これは、年齢に関係なく、自分は「女」と思っている女性でも、その言動によっては、すでに「オバさん」化していることになり、すでに男性を惹きつけることに関心がなくなった女性でも、「女」であリ得ることを意味している。女性はいつまでも「女」であってほしい。

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